ブラジル所在財産の相続:管轄・準拠法・遺産分割手続
ブラジルにある財産は、被相続人の国籍や住所を問わずブラジルで手続します。相続分を定める法、遺留分、そして国外の相続人の関与方法を解説します。
ブラジル国内に財産を残して人が亡くなった場合、その財産はブラジルで手続されます。被相続人の国籍を問わず、どこに住んでいたかを問わず、他国ですでに相続手続が進行中であるかどうかも問いません。
この一つの規律が、ほかのほとんどすべてを決めます。どこで手続するか、どの書類が必要か、国外に住む相続人は何をすべきか、そしてなぜ外国の相続裁判ではブラジルのマンションの名義が移らないのか。本記事では、ブラジル側の手続と、国外の相続手続との関係を説明します。
どの国で相続手続を行いますか。
民事訴訟法第23条第2号は、ブラジル国内に所在する財産の遺産分割手続について、ブラジルの官憲に専属管轄を認めています。専属とは文字どおりの意味で、外国の裁判所はこれを行うことができず、これを行おうとする外国裁判は上級司法裁判所(STJ)で承認されません。
この規律は、被相続人がブラジルに一度も居住したことのない外国籍の方であった場合にも適用されます。
その逆もまた真であり、世界規模の一つの手続を想定していたご家族は意外に思われます。上級司法裁判所は、国外に所在する財産はブラジルの遺産分割手続を構成しないと判断し、さらに、生存配偶者および遺留分権利者の相続分を算定する際にそれらを算入することもできない、としています。
実務上の帰結は、二つの相続、二つの手続、二組の弁護士が並行して動くということです。両者の調整は重要です。一方での判断が、他方の課税上の立場に影響しうるためです。
誰がどれだけ相続するかは、どの法が決めますか。
管轄と準拠法は別の問題であり、ご家族が最も誤解しやすいのがこの点です。
ブラジル法適用規範導入法第10条により、相続は原則として被相続人の最後の住所地の法によって規律されます。したがってブラジルの裁判所が、誰が相続人であり相続分がどうなるかを判断するにあたり、外国法を適用することがありえます。
ただし重要な留保があります。相続がブラジル人の配偶者またはブラジル人の子に関わる場合、ブラジル法のほうが彼らにとってより有利であるときは、ブラジル法が適用されます。同じ保護は連邦憲法第5条第31号にも定められています。
遺留分(legítima)とは何で、なぜ外国籍の方に関係するのですか。
ブラジルの相続法は、自由処分主義を採っていません。
遺産の2分の1はlegítima(遺留分)として、遺留分権利者——直系卑属、直系尊属および配偶者——のために法律上留保されています。遺言によって自由に処分できるのは、残る2分の1(parte disponível)のみです。
被相続人が自由に相続人を廃除できる法制から来られた方にとって、早い段階で理解しておくべき点はここです。国外で有効に作成された遺言も、ブラジル所在財産については遺留分を覆しません。そうでないことを前提とした資産承継の設計は、まさに機能すべき場面で崩れます。
裁判手続と公正証書、どちらによりますか。
| 裁判外(公証役場) | 裁判所 | |
|---|---|---|
| 相続人全員の合意 | 必須(全員) | 不要 |
| 未成年・制限行為能力の相続人 | 2024年規則第571号以降、条件付きで可能 | 常に可能 |
| 遺言がある場合 | 明示的に許可する確定判決を得た後に限り可能 | 常に可能 |
| 通常の所要期間 | 条件を満たせば短い | 長い |
| 代理 | 弁護士の関与が必要 | 弁護士の関与が必要 |
国家司法評議会規則第571号(2024年)は裁判外の手続を大きく広げましたが、その条件は厳格で、かつ累積的です。
未成年または制限行為能力の相続人がいる場合、検察が肯定的な意見を述べる必要があり、未成年者が取得できるのは各財産の観念的持分であって特定の財産ではなく、同一の行為で当該持分を処分することはできません。
遺言がある場合、裁判外の手続が可能となるのは、遺言の開封および執行の手続において、公証役場によることを明示的に許可する確定判決が出た後に限られます。公証人は裁判官の代わりではなく、裁判官の後に来ます。また遺言に認知その他の撤回不能な意思表示が含まれる場合、手続全体を裁判所で行わなければなりません。
国外に住む相続人はどのように関与しますか。
渡航の必要はありません。必要なものは三つです。
- 遺産分割手続における代理、相続の承認、分割証書への署名の各権限を明示した委任状。国外から委任状を作成する方法をご参照ください。
- アポスティーユとブラジル国内で作成した公認翻訳を付した身分関係書類。
- 相続人それぞれのCPF。CPF のない相続人は不動産登記簿に記載できず、ほかのすべてが整っていても移転が止まります。
具体例
日系ブラジル人の方が日本に居住したまま亡くなり、日本にいる子と、サンパウロ州に居住する子の二人を残しました。財産は日本の預金と、パラナ州の実家です。
パラナ州の実家はブラジルで、専属的に手続されます。日本の預金は日本で処理され、ブラジル側の計算には一切入りません。最後の住所地が日本であれば、相続の内容は原則として日本法により規律されます——ただし、問題となる点についてブラジル法のほうがブラジル人の子にとって有利であれば、その限度でブラジル法が適用されます。
日本にいる子は、在東京ブラジル総領事館で作成した委任状により、ブラジルの弁護士に代理させることができます。二人とも成人で、すべての点について合意しているのであれば、裁判ではなく公正証書による分割が可能です。
どのような書類が必要になりますか。
| 書類 | 注記 |
|---|---|
| 死亡を証する書面 | 国外で発行されたものはアポスティーユと公認翻訳が必要 |
| 被相続人の身分証明と CPF | ブラジルに財産を有していた外国籍の被相続人にも CPF が要求されます |
| 婚姻を証する書面または事実婚の疎明 | 配偶者の相続分と夫婦財産制を決めます |
| 相続人の出生・婚姻を証する書面 | 相続の系列を証します |
| 遺言(ある場合) | その開封・執行に関する裁判とあわせて |
| 各不動産の最新の matrícula | 不動産登記所が最近発行したもの |
| 預金・株式・車両の残高証明 | 死亡日現在のもの |
| ITCMD の申告と納付 | 税率と期限は各州が定めます |
| 相続人全員の CPF | これがないと移転登記ができません |
よくある問題は何ですか。
- 被相続人名義に登記されていない不動産。数十年前に購入し、証書が登記されないままの家屋は、法律上まだ遺産を構成していません。その権利の連鎖をまず是正する必要があり、遺産分割手続そのものより時間がかかることがあります。
- ITCMD の期限徒過。各州が独自の期限を定め、期限後の申告には通常、加算金が課されます。期間の進行は死亡時から始まり、ご家族が態勢を整えた時からではありません。
- 外国の遺言で足りると考えること。遺留分についても、ブラジル所在財産についても、足りません。
- 所在不明の相続人、または署名を拒む相続人。全員の合意がなければ裁判外の手続は閉ざされ、事件は裁判所へ移ります。
- 国外の相続人に CPF がないこと。ほかがすべて整った登記の段階で判明しがちです。
次に何をすればよいですか。
最初の段階で、二つの書類がほぼ全体像を示します。死亡を証する書面と、ブラジルの各不動産の最新の matrícula です。この二つで、ブラジルの制度上その方が誰であったか、実際に何が名義に入っているか、そして相続を進める前に登記簿上で是正すべき事項があるかが分かります。
出典: ブラジル民事訴訟法第23条第2号 / ブラジル法適用規範導入法第10条 / 連邦憲法第5条第31号 / ブラジル民法第1.845条・第1.846条 / 国家司法評議会規則第571号(2024年)(規則第35号(2007年)の改正)
よくあるご質問
親族が国外で亡くなりましたが、ブラジルにマンションがあります。相続手続はどこで行いますか。
そのマンションについてはブラジルで行います。民事訴訟法第23条第2号は、ブラジル国内に所在する財産の遺産分割手続について、ブラジルの官憲に専属管轄を認めています。被相続人が外国籍であった場合や、国外に住所を有していた場合も同様です。外国の相続に関する裁判はブラジル所在財産を処分できず、それを試みる裁判を上級司法裁判所(STJ)は承認しません。
ブラジルの財産と国外の財産を一つの手続でまとめられますか。
できません。上級司法裁判所は、国外に所在する財産はブラジルの遺産分割手続を構成せず、生存配偶者および遺留分権利者の相続分を算定する際に考慮することもできない、と判断しています。実務上は、ブラジルの財産についてブラジルで、他国の財産についてその国で、並行して手続を進めることになります。
ブラジルの不動産を自由に誰にでも遺せますか。
完全には自由ではありません。ブラジル法は遺産の2分の1を遺留分(legítima)として、直系卑属・直系尊属・配偶者という遺留分権利者に留保しています。遺言で自由に処分できるのは残る2分の1のみです。自由処分を認める国で作成された遺言も、ブラジル所在財産についてはこの規律を覆しません。
相続人全員がブラジルへ渡航する必要がありますか。
ありません。国外に居住する相続人は、遺産分割手続における代理、相続の承認、分割証書への署名の各権限を明示した委任状により、弁護士を通じて手続に関与します。国外で発行された身分関係書類には、アポスティーユとブラジル国内で作成した公認翻訳が必要です。
裁判所ではなく公証役場で手続できますか。
場合によります。裁判外の手続には相続人全員の合意が必要です。国家司法評議会規則第571号(2024年)により、未成年者がいる場合も、検察の肯定的意見と、未成年者が各財産の観念的持分を取得することを条件に認められるようになりました。遺言がある場合も、公証役場によることを明示的に許可する確定判決を得た後であれば可能です。
ブラジルの相続にはどのような税がかかりますか。
ITCMD という州税で、死亡による移転と贈与に課されます。税率と申告期限は各州が定め、期限後の申告には通常、加算金が課されます。裁判所も公証役場も納付を証する書面なしに手続を終結させないため、分割を正式に成立させる前に納税を済ませる必要があります。
本記事は一般的な情報提供を目的とし、ブラジル法の概要を説明するものです。個別の事案に関する法的助言に代わるものではありません。